氾濫するヴァイオリン

早くも五月です。昼間の日差しはなんや!暑いわ!
四月は色々とトラブルがあり大変だったのですが、
さあやっと落ち着いて連休を迎えています。


先日生徒のNさんから、フルサイズの楽器を一緒に見に行ってほしいとの連絡を頂きました。
昔使っておられたという楽器の糸巻きや弓等に限界がきており、
取り替えるぐらいなら買い替えを考えているということでした。
選ぶ際は絶対に付き添いますからと常々申し上げておりましたので、声がかかりました。
昨年より私の元にこられてそろそろ小曲だけでなくコンチェルトも、という時期にさしかかっている今、いい楽器に替えればよりいっそうの上達が感じられるのではないかと楽しみです。

楽器についてよくある御相談が
「いくら以上のヴァイオリンがいいんですか」というものですが、
これはもう正直なところ、なんとも申し上げられません。
何故ストラディヴァリやグァルネリが何億、何千万もするのかときかれても同じく、
なんとも申し上げられません。
そしていつもどう答えるかというと、
「値段ではなく、弾いてみないとわからない」。この一言に尽きます。
安いから悪い音、高いからいい音、この考えは非常に危険です。
ヴァイオリンは最も高い値段のつく楽器と言われています。
何故か、
それは単に楽器というだけでなくヴァイオリンに骨董品・美術品としての付加価値(付加というべきか…)があるからです。
絵画等と同じく、もう同じ作者の、同じ質の、同じものは二つと現れない、というところに高値がつくのです。

現在インターネット等で溢れるほどのヴァイオリンが売られています。
どうしても安い方が良い、
最初はいいヴァイオリンを弾いていてもいい音が出せないから、
と仰る方にはそういったものでも私は反対していません。
経済的負担になっては元も子もありませんから、
「返品出来る期間に一度私が点検できるように」という条件で購入して頂いています。
そういったヴァイオリンが届いた時、
「意外と音が出る」と殆どの方が喜ばれます。
ただしそれはあくまで「最初はいい音が出せないから」という時期に限ります。
運良く耳障りのいい楽器だったとしても、
きちんとした行程でヴァイオリン職人に作られたものと、機械で大量生産するものとの決定的な違いは
以後の「調整」が可能な材質か、
ベニヤと接着剤を使った「調整」が不可能な材質か、というところでしょう。

私たちヴァイオリン弾きは、ヴァイオリンの調整等に足しげく通うわけですが、
一体ヴァイオリンの調整とはなんぞや?という方もおられると思いますので具体的に紹介しておきます。
・駒や魂柱の交換
・ニスの補修
・年月や気候によって木にうまれた小さな歪みの修正
・私のように暴れるように弾くと(笑)生まれる傷の修復
そして、本体の響き方自体を変える大手術となれば、整える、ではなく削る、という作業も出てきます。
ヴァイオリンに使われている木材は、表板が松、裏板が楓、指板が黒檀で、接着に使われるのはニカワです。
ニカワであれば分解して調整出来るのですが、安い楽器にはその他の接着剤が使用されます。
材質も合板、ベニヤが使われることも多く、薄い、軽いベニヤを接着剤でくっつけてしまえば
上に記したように調整してもらうことはまず不可能です。
自分の成長と共に楽器の成長を楽しむ、ということが出来ないのです。


それぞれの部分や保存方法等に言及していると何時間あっても足りないのでこのへんにしておきますが、
結局、
インターネットや何かである種覚悟して購入するならばいいのですが
楽器やさんに行ってヴァイオリンをひとつ見せられて決める、というのが一番避けたいことです。
更に「ではこの型の新品を注文しておきます」なんてどうしようもない事がまかりとおってはいけません。
木目が木によってそれぞれ違うように、木から作られるヴァイオリンは「同じ」ということがあり得ないはずです。
いや、でも多いんだ!「同じ型」っていう表現が…。

予算を決め、
いくつか試し弾きをして、
誰かが演奏しているのを遠くで聴いたり近くで聴いたりしてから絞りこんで決めるのがベストでしょう。

なんつって熱くなっていますが、
世界中で自分に巡り合う大事なパートナーなんだから、
手抜きせずに選ぼうぜーっていうことで!


今日炊いたタケノコをつまみつつ書いたエントリーでしたあ。

投稿者:mizuno 2008年05月01日 21:16

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