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とある病院のホスピスで演奏しないか、と知り合いの女性医師から連絡を頂き、単身でお邪魔して来ました。
歴史のある大きな病院の最上階にあるそのホスピスでは、末期癌の患者さんが生活しておられます。
そういった方々にお会いし、ヴァイオリンを聴いて頂くのは私にとって初めての体験となりました。
(ホスピス【hospice】:末期癌(がん)患者など死期の近い病人を対象に、延命処置を行わず、身体的苦痛を和らげ、精神的援助をして生を全うできるように医療を行う施設です。)

あの場所で演奏出来た事、
そしてスタッフの皆様にお会いできた事、
患者の皆さんとお会い出来、一緒に歌えた事、
すべてが私にとって幸せな、かけがえのない思い出となりました。
演奏した曲目は悩んだ結果、
馴染みのあるものばかりを選びました。
Amazing Grace、G線上のアリア、
見上げてごらん夜の星を、
そして川の流れのようになど、他にも数曲生のヴァイオリンの音で聴いて頂く事が出来ました。
ロビーまで出てくることの出来る患者さん、その御家族をはじめ、
ホスピス内の皆さんの耳に届けることが出来たのですが、私は反対に、そんな人々から大きな衝撃と、衝動を受けました。
私の父母と歳の変わらないであろうご夫婦がいらっしゃいました。
ご主人はパジャマ姿で、どうやらその方も末期癌を患っていらっしゃるのでしょう。
祖父母と同世代であろう方もにこにこと、私の前に座っておられました。
息子さんでしょうか、母親の手を取り、じっとこちらを見て、そして聴いておられました。
「皆さん、一緒に歌って下さいね」と歌詞を配ってもらい合唱したのが、私の好きな曲、美空ひばりさんの「川の流れのように」でした。
先程のご夫婦は二人で歌詞を覗き合い、
おばあさんは歌詞を覚えておられるのか、私を見つめながら歌っておられました。
知らず知らず歩いて来た 細く長いこの道
振り返れば遥か遠く 故郷が見える
でこぼこ道や曲がりくねった道
地図さえない それもまた人生
生きることは旅すること
終わりのないこの道
愛する人そばにつれて 夢探しながら
雨に降られてぬかるんだ道でも
いつかはまた晴れる日が来るから
ああ 川の流れのように
おだやかに この身をまかせていたい
ああ 川の流れのように
移りゆく季節 雪解けを待ちながら
私がそんな場所で弾いていいものかと考えもしました。
私の家系に癌で亡くなった者はおらず、辛さも苦しみも分からないからです。
どのように感じ、どういった葛藤があり、そこに生きておられるのか想像もつきません。
ご家族がどんな思いでいらっしゃるのかも同じことです。
いつもは何気なく練習する曲も、そういった方々の前で弾くと思うと、どう弾こうかとこれまでに無い程悩みました。
ただ出せる限りのいい音を聴いてもらおうということに集中しました。
そして、出来るだけ皆さんのお顔を見ながら演奏しようと思いました。
スタッフの涙が見えました、
あのご夫婦の奥様が、肩を震わせ泣いておられました、
上手く声の出なくなったおじいさんも、一緒に歌って下さいました。
私の心は揺さぶられ、たまらない気持ちでした。
素晴らしい、これまで聴いたこともない合唱でした。
「次演奏をお頼みするとき、また聴ける人は殆どいない」
誘って下さった医師が、演奏後に私におっしゃいました。
そんな重要なことを、私はその時初めて知ったのでした。
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すごい経験をされましたね。
ボクもPTの学生の頃。
小児癌の子供たちと触れ合う時がありました。
片足を切断したり・・・
それでも癌の進行は彼らを許しはせず、
着実にいのちを奪う方向へと蝕んでいました。
それでもあの子達は一生懸命歩こうと
リハビリを続けていました。
親御さんも一緒になって病気と闘っていました。
水野さん どうか時折彼らの心を癒してあげてください。
彼らの魂に響かせてください。
水野さんのヴァイオリンはその力を持っています。
投稿者 チュー太 : 2006年01月29日 23:58
その方々は水野さんの演奏聴けて幸せだったと思う。
人生の長さは人によってサマザマで
その終わりを恐さを持って迎える人も
安らぎを持って迎える人もいるでしょう。
ただ誰でもそうだと思うけど、逝くまでに少しでも幸せな時間が多い方がやっぱりいいですよね。
その幸せな一時をあなたは演出することができたと思うし、
その結果その場にいた人々
が流した涙が「嬉し涙」であっても「悲し涙」であっても
ほんとにかけがえのないものだと思います。
投稿者 はっちゃん(ヒダマリ) : 2006年01月31日 11:07
チュー太さん>
暖かいお言葉、ありがとうございます。
今回は本当にたくさんの患者さんと出会いましたが、言葉を交わすに至りませんでした。
その分私の音と、皆さんの声との重なりが、たまらないものでした。
自分が何か出切るはずだというような使命感ではなく、漠然と「また聴いて頂きたいな」と思います。
はっちゃん>
患者さんたちと出会って、皆さんが死を目前にして幸せに敏感になっておられることを感じました。
はっちゃんのソウルフルなピアノも、そんな方々の耳に届けられたら素敵ですね!
それにしても、月並みですが、音楽をやってて良かったと思える瞬間でした。
あまり言うと白々しいですね。自粛!
投稿者 水野 : 2006年02月09日 01:15